FT-101ZD や FT-901 で気になる事

気になる事があります。それはCWモードでいわゆる Start Up Distortion です。我が国では余り話題にはなっていませんが。
当方が初めて目にしたのがA CW Kwying Interface 1987年4月号のQST誌 P51〜P53に掲載されたW6OWP Bartlett氏著です。
本体改造無しで外部に一寸した回路基板を設置して高周波出力の歪を解消するユニットと使い方を記述しています。
この画像はFT-101ZDをCWモードで動作させVOXで送信と受信を切り替えてみたところです。
短点を連続送出した場合の状況です。

ご覧の様に最初の短点のLeading Edgeが欠けています。
それに対して2番目の短点の方は正常です。
これは送受切り替えのタイミングと高周波信号の出方が合っていないからです。
下の信号がキー信号で 上側のが高周波信号波形です。

こうなるのはキーヤーが動作しているのにアンテナリレーが受信から送信に切り替わっていないからです。
正常に動作している短点信号の送出状態の画像です。
この状態は送受切り替えをマニュアルでやりキー信号を連続して出しているものです。いわゆるMOXの状態です。

この辺りに信号の一部が欠けるのを除去する方法のヒントがあります。

要するにタイミング

正しいキーイングのタイミングは

送受のメカニズムとキーインとの関係 タイミング は次の通りです。 
左のチャートが正しいタイミングの例です。動作は次の通りです。
キーヤーの信号で全ての動作が開始又は終了します。
キーイングの前縁で機器を受信から送信状態に変換しますが未だ信号は発送しません。
機器が十分送信状態になって(適当な遅延時間の後)初めてアンプのバイアスを適正にし電波を出します。
キーアップして短点或いは長点を出し終えたらアンプのバイアスをカットオフにし高周波信号が止まります。
次に更に適正な遅延をかけて送信状態から受信状態に戻します。
これ等の一連の動作を各々の短点或いは長点毎に司る訳です。
その為の遅延時間発生回路が必要で本来は機器に内蔵すべきでしょう。
尚 送受転換は大抵はリレーを使いますがその動作時間にも注意を払う必要があり数mSの部品を採用します。
しかしアンテナリレーは高周波信号(電流)を入り切りする訳ですから検討が必要です。実際にはそんな芸当はせずにしたいです。
正しいタイミングを実現する最初の取っ掛かり箇所は左の画像で赤丸で示す箇所です。FT-101Zの例ですがFT-901でも同様です。

即ち 左上のPTTとその下のKEYです。
夫々の行く先はPTTが右にあるJ03 Pin3でこれはVOXリレーを動作させます。
KEYは右下のJ02 Pin2でTone Osc Cont です。
どちらもアースすると動作しますから 先ず PTTをオンしてVOXリレーを動作させて機器を受信から送信へ切り替えてから おもむろにKEYを操作すればMOX機能状態ですからStart Up Distortion は発生しません。
勿論 PTTとKEY入力の間には適正な遅延時間を置きます。
そしてKEYを離してからPTTをアースから浮かせれば機器は送信から受信へ戻ります。
こうして一連の動作が終了します。

要するに適切なタイミングで動作する回路を作れば良い訳です。

CW Keying Interface

表題のQST誌の記事とは次の通りです。
1987年4月号のQST誌 P51〜P53に掲載されたW6OWP Bartlett氏著
この文献の内容は次の通りです。
外部に適切なタイミングで動作する回路基板を用意しその信号出力を所定のコネクターへ接続して目的を達する・・・です。
画像では右側に写っているユニットがそれです。
記事ではタイマーICを複数個使い幾つかの時間設定を設け 二つの信号の前後に適切な時間差(遅延)をもつ信号を作っています。
本体の改造なしで実現していてなかなか上手い構造です。
問題は遅延時間を結構大きく設定しなければならない事です。
本体の肝心な箇所の動作時間を考えると数十mSの時間設定が必要になります。
大部分は送受転換リレーとそれに続くアンテナ切り替えリレーの動作時間でこれ等が長いのが問題になります。

これが嫌ならリレーを高速型に交換しなければなりませんが。

真空管機器時代にはもっと本格的なブレークイン方式を構築したハムが居ます。
W2LYH McGraw 氏で1960年1月号のQST誌に掲載された記事がそれです。当時としては画期的な方式です。